栗原権右衛門日本電子株式会社長迎え勉強会
2017年4月5日

第一線で活躍する多くの現役会員のために総務・事業委員会がレギュラー開催しているビジネス勉強会の第8回は4月5日午後6時から52会員が参加して紫紺館4階で開かれ、連合駿台会副会長であり電子顕微鏡で世界トップシェアを誇るなど理化学機器製造販売界で躍進する日本電子株式会社の栗原権右衛門代表取締役社長(46年商学部卒)に「グローバルニッチ企業の新展開」と題して講演と質疑に応答をいただきました。

戦後間もない1949(昭和24)年に「極微の文化の建設」の理念もとに千葉県茂原市で創立された同社が、高い技術開発力で電子顕微鏡から医療機器、半導体と幅広い製品展開によってJEOL(ジオル)の愛称で世界のマーケットを席巻していったことは、よく知られています。栗原氏は2008年に社長に就任して9年余、数々の革新策を打ち出して、今年度売上げ1200億円、営業利益70億円を見込むまでに躍進させ、今やグローバルトップ企業100に選ばれるなど注目企業となっています。

世界、分けても欧米が主マーケットだった同社に「海外に出たい!」の一心で入社したという栗原氏ですが、雄飛はままならないまま、国内などで営業の経験を重ねていきました。とはいえ、原子一つ一つを区分できるほどの200万倍という脅威の顕微鏡など強力な商品を展開するだけに、国内外の確かな顧客やノーベル賞受賞者の大村智、鈴木章、野依良治の各氏などと交流する機会に恵まれ、持ち前の営業手腕で人脈や実績を積み上げていったといいます。そして、舵取り役を任されたのがリーマンショックで厳しい経営環境に陥った折だっただけに、大胆にして周到に改善改革、戦略を断行していったといいます。

まず、会社の「強みと弱み」を徹底的に分析、企業風土改革、経営構造改革、成長戦略などに豪腕を振るいます。技術力が高く真面目な社風である一方、ヒエラルキー体質や市場軽視の傾向などもあるところを、「見える化や透明化、さらにいわゆるPDCAや市場からの改革などを行い、社長賞をも創設、社内報も大幅刷新しました」とあまたの実例をご披露いただいた。そして「社長はファンクション役であるべきだ」との持論を強調し、某誌の取材でコメントした「泣き言を言え!」が話題になったというエピソードも明かしてくれました。

その後、中期経営計画を次々に打ち出し、人員見直しやコスト削減、グループ組織再編などを着実に達成して1000億円企業に押し上げ、2011年の東日本大震災の際も積極的な復興援助事業で賞賛も集めています。「何事にも横の連携が必要だと考えYOKOGUSHI(横ぐし)という戦略を展開、これを背景に新中期経営計画ではスピードとチャレンジとディファレンスのトライアングルプランを推進して、もっと収益性の高いとがった中堅企業を目指していきたい」と熱っぽく話していました。今後は高額な機器を買えなくてもウェブを通して使える新規事業にも挑むそうだ。

質問に答えて、世界に営業する栗原氏には、小学生から聴いているクラッシック音楽が大いに役に立つという趣味が実益となった話も、飛び出しました。そして、パスツールの「科学に国境はない。しかし、科学者には祖国がある」にかぶせて、「事業に国境はない。しかし、企業には祖国がある」というポリシーを披露してくれました。そこからは、飽くなき経営者魂と前進あるのみの明大スピリットを感じました。

(総務・事業委員会)